手数、足数


少年部上がり


空手本来の動きを
 今では少年部の大会も同じ学年の中でクラス分けしてレベル別にするのは当然ともなってきましたが、以前はまだ選手層が薄く、同学年であればレベル別どころか体重別にもなっていないことがほとんどでした。

 もう十年以上前の話になりますが、少年部の大会が増え始め、急速に少年部の試合レベルが上がり始めた頃、出場クラスが初級上級と分かれるようになったり、チャンピオンクラスなどが創設されるようになってきました。
 チャンピオンクラスの試合を見た時、技の回転、手数の多さに感心し、試合中休まず動き続け、常にステップを踏んで攻める子供たちの組手を見て、
「このままの動きが大人でできれば全日本でも優勝できるなぁ。」
と、他の道場の先生と話をしたものでした。

 子供は心拍数の回復が早く、激しく動いて息が上がっても少しの休憩ですぐに心拍数が下がって、また動けるようになるという身体的特徴があるからこそ可能なのであって、大人ではそんなスタイルの組手は無理だと思っていました。

 ところが年月が経ち、少年部で活躍していた子供たちが大人になって一般へ進んでも同じスタイルで戦って大会で勝ち上がるようになってきました。
 ある意味、私の予想は当たったのですが、大人になっても少年部と同様に動き続けられる稽古を積んできた選手たちは賞賛すべきものだと思います。
 そして、そういう組手スタイルで戦う選手が試合で勝つ姿が見られるようになると、成人してから空手を始めた人も、試合で勝つ為に同じ戦法で組手をするようになってきました。

 なぜなら現在の試合ルールではそれが有効だからです。

 もちろん、身体が動く間はハードに動く稽古をし、大会を目指して努力するのは悪い事ではありませんし、むしろ推奨されるべきです。

 しかし、それが空手のすべてではないという事は知っておいて欲しいと思います。 手数を出し続け、ステップで動き回る組手が有効なのは、それがfont color=red>有利なルールで試合をしているからです。その組手スタイルは、一撃の破壊力よりも判定時に優勢に見えるための動きであって、その技が全く効かないということもないのでしょうが、一発で倒す事を目指す姿勢はそこには見られません。

 空手は元々生死を掛けた対戦を想定した武術であり、空手本来の技には投げ関節技もあって、掴み引っ掛けを用いた捌きなども空手の重要な技術の一つです。

 現在の「フルコンタクト」と一般に呼ばれる直接打撃制のルールは、これまでの大会の蓄積によって幾多の変遷を経て現在の形になってきたのですが、初期の頃は掴み、投げもある程度許容されていた為、それにも対応できる組手スタイルでした。

 技の出し方も「いかに効かせるか」を優先的に考えた組手スタイルであり、どのように「極め技」に持っていくかというコンビネーションでした。ですから試合時間中ずっと技を出し続けるなんてことはなかったのです。
 極め技に到るコンビネーションでの技の応酬の結果として、試合終了時までに多くの技を出した方が優勢勝ちになるというルールだったのですが、今は初めからそれを目指した戦法になっているのです。

 最近では試割りも演武の為にだけするようになっていますが、本来は鍛えた拳足の強さと技の破壊力を「試す」ためのものです。
 その強力な一撃を入れるための「捨て技」「極め技」であり、試合時間いっぱい「捨て技」を出し続けるなんて事はありえないのです。

 以前にこのコラムで、とにかく手数を出し続ける少年部の組手スタイルを「紙相撲空手」と揶揄した事がありましたが、現在は一般部にまでそれが広がっているように思います。
 もちろん、それだけ動き続け、攻め続ける事ができるのはとてもたいへんな事なのですが、それが空手の最終目標となるのは寂しい気がします。

 そんな組手ができるのは若くて体力のある間だけであり、それで勝つことを目標にしていたら、年齢が上がって体力が落ちた時には空手を続けるモチベーションがなくなってしまいます。
 若い時には若い間にできる組手をしっかりするべきですが、空手は体力が落ちた時、柔軟性が下がった時にもそれに応じた組手ができるものでなければなりません。

 試合を円滑に運営する為には仕方ない面もありますが、ちょっと手が背中に回っただけで「抱え込み」反則、突っ込んでくる相手を掌底で止めただけで「掴み」「押し」反則というのは、空手の大切な部分を見失ってしまうような気がしてなりません。

 道場での稽古では掴みや投げも念頭に置いて組手をしているというところもけっこうありますが、試合で勝つ事を稽古のモチベーションにしている現役選手にとっては「ムダな」稽古にしか思えないのでしょう。やってもあまり真剣には取り組んでいないようです。

 空手本来の動き、技を残す為にも絶対に必要なことなのですが、それだけでなく、年齢が上がって若い時のように動けなくなった人でも「試合」というモチベーションが維持できるようにするためには、試合ルールでの制限を緩和するべき所もあるのではないかと思います。


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