ルールに則って


ラスト30秒の


連打を止めるには
 休まず打ち続けてくる連打に負けまいとして、こちらもそれ以上の連打で対抗し、お互いが技を出し続けたまま終了の笛を聞くという事がよくあります。そして、終了と同時に場内からは死力を出し尽くして戦った2人に大きな拍手が・・・

 見ていて感動的ではありますが、実はそれほどたいしたことないと思いませんか?だって何十発と叩いても効いていないんですよ。技術的に見ても「技の攻防」ではなくて「技の攻々」ですね。

 「攻撃は最大の防御」の言葉通り、休まず攻撃している間は、相手は受けに回っているハズですから、自分が攻撃を受けるハズなく、当然、防御する必要もない事になります。

 だとしたら、冒頭に書いた「ラッシュ合戦」はなぜ起こるのでしょう。
 それは「効かない技」だからです。受ける必要もない技だからです。勿論身体に当たってはいますから、全くダメージがないとは言いませんが、「食らっても倒れない技」であるのは確かです。

 そんな技の出し合いは「紙相撲」みたいなもんです。トントントントンやっている内に、たまたま角度やタイミングが良くて相手が倒れた、ということはあるかもしれませんが、倒れなかったら判定で技の回転が多かった方の勝ちになるだけです。

 もちろんルールに則って競技しているのですから、そのルールに従って判定が出され、勝敗が決まるのは仕方ない事です。しかし、初めてこの戦法にやられた時に「全く効いてないのに!?」と、納得のできない思いを抱いた人も多いのではないでしょうか。けれど、ルール上は「負け」ですから、いくら「効いてない!」と叫んでも、それは負け犬の遠吠えに過ぎません。
 そして、そんな事が何度か続くと、自分もラスト30秒に「効かない」技の連打をするようになっていたりします。
勝つためにはそのルールで有効な技を使う。
 それは「スポーツ」として当然の帰結ですが、「武道」としては情けないと思っている空手家が大勢いると思います。(←希望?)

 ルールがそうなっている以上、「武道」派は負け続けるしかないのでしょうか。
 いいえ、ちゃんとルールの中で対抗する事ができます。いや、対抗できなければいけません。試合は、武道の中の一部分をスポーツとしてやっているだけだとは言っても、武道が上位に来なければいけません。そのために「武道」派は対抗策を考えなければいけないのです。

では、その方法は・・・
前の手、前の足を使う です。

 力を込めた突き蹴りを出すには、利き手を後ろに構えてタメを使った方が技を出しやすいのですが、その分、技を出すのが遅れます。回転の早い連打を出してくる相手には反応が遅くなってしまいます。

 そんな相手を止めるのには、前の手、前の足を使って相手の出だしをストップするのが有効です。相手がラスト30でラッシュを仕掛けてくる時は、当然ながら手足が届く位置に入ってきます。いかに回転の早い突きでも全く届かない距離で出しているワケではないのですから、相手の技がこちらに届く瞬間に前の手、前の足で相手を止めるのです。

 具体的にはカウンターで突き蹴りを合わせるのですが、相手の突き蹴りは軽くて二撃、三撃が矢継ぎ早に出されるので、一発目に合わそうとしても少しタイミングが遅れると連打によってこちらが崩されてしまいます。

 相手の連打を止める為には、軽い技をカウンターで合わせるだけでは不十分です。 たとえ合わせるのが多少遅れて、二撃、三撃目が来たとしても相手の攻撃は連打の回転を重視していますから、それほどパワーはありません。ですから思い切りパワーを込めたカウンターを返すのです。

 また、この場合のカウンターは一般に言われるような相打ちではありません。 普通、カウンター攻撃は相手の決め技に近いパワーを込めた攻撃に合わせるので相手へのダメージが倍増しますが、相手は回転の速さを求めた連打ですから、カウンターを合わせてもそれほど威力が増えません。

 ポイントは相手の連打を止めることにあります。

 そのためには相手の攻撃を「受ける」のです。この「受ける」というのは攻撃をもらうという意味ではありません。
 相手の攻撃をもらい続けていたら全くのノーダメージで効いていなくても、試合終了時にその状態だったら判定負けが確実です。

 「受け技」を使うのです。しかし、これも上記同様、技をもらわず全て「受けた」としても、判定では「負け」です。相手の方が攻勢で優位だからです。

 では、どうするのかというと、「受けで攻める」又は「受けながら攻める」のです。  「ブロック&カウンター」ではなく、「カウンター with ブロック」です。

 「受け返し」ではなく、受けと同時にカウンターです。そして、その技にはパワーが乗っていなくてはなりません。受けで崩しているところに攻撃を入れる基本通りの攻防です。
 技の回転だけで判定勝ちを拾うのは小手先のテクニックに過ぎません。小手先の技術に小手先で対応しようとしても先は無いのです。

 迷った時は基本に戻る。そして、ここで言う基本とは「威力ある技を相手に入れる」ことです。

 効かない技だから相手は受けずに連続して技を出してくるのです。パワーのある効かせることのできる技ならば相手は受けざるを得ません。ここで初めて攻撃は最大の防御足り得るのです。パワーを込めた突き蹴りはたとえ相手に受けられたとしても、そこに隙が生じ、こちら側に優位な状況が生まれてきます。少なくても技の攻防が見られるようになってきます。
 強い技を出す事で技の攻防が生まれてきますから、後は互いの技のレベル差で勝負が決まってくる事になります。そうなると負けたのは自分の実力不足であると納得さぜるを得ませんから、次へ向けて更に稽古を積む意欲も湧くってもんです。

 勝っても負けても互いのレベル向上に繋がるからこそ、武道で試合をする意味があるのだと思います。


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