初心者の体力作り

 以前に道場生から質問されて答えたものですが、同じ悩みを持っている方も多いのではないかと思い、内容をまとめ直して掲載します。

 空手を始めて最初の内は稽古についていくが大変で、号令に合わせて基本の技をやっている時にも遅れがちになってしまいます。

 なぜ自分はこんなにも体力が無いんだろうと情けなくなってくるのですが、半年、一年と空手を続けていくと何とかそれなりに動けるようになってくるものです。

 それでも組手になると黒帯の先輩が平気な顔をして何人もの色帯の相手を次々にこなしているのに、自分は一人目が終わっただけで息も絶え絶え、ハァハァと犬のように肩で息をしている有様です。

 入会の問い合わせで
 今はまだ稽古についていく体力が無いので、自分でトレーニングを積んで基礎体力を付けてから入会したいと思います。
 なんていうメールの届くことがあります。

 たいていそれっきり何の音沙汰もないですけどね。

 もちろん長い間入院していて、現在リハビリ中ですという場合には、すぐに空手の稽古を始めるわけにはいきませんが、他のことで体力を付けてる時間があるのなら、すぐに空手の稽古を始めるべきです。

 なぜなら、たとえ他のスポーツなどを経験していて、本来の意味での基礎体力があったとしても、空手の稽古を始めた時にはバテて仕方ないものです。

 まったく運動の経験が無いような人は、当然ながらまずは自分の身体を動かすための基礎体力をつけなければいけません。けれどまだ若い学生だとか、他の運動を経験している人だと、本当の意味での基礎体力は持っているようです。

 それなのに稽古で組手になると、相変わらず肩でハァハァと息をして、もしかしたら自分の前世は犬だったんじゃないだろうか、などとバカなことを考えたりして、一生懸命頑張っているのに、いつまでも体力がついてないような気がするものです。

 では、なぜ道場では体力が上がってきている実感がないのかというと、空手で使う身体の動きは、今までの体の使い方と違って馴染みのない動きをしているために、スムーズに呼吸することができず息が上がってしまうからです。

 たとえどんなに体力がある人であっても、わずか3分間でさえ息を止めたままで動き続けることなどできません。カラータイマーの鳴っているウルトラマンみたいなものです。

 つまり稽古をたくさんこなしていく中で、自分の動きと呼吸を合わせ、動きについていける体力を養う必要があるのです。

 若くて大会に出るような選手の場合は、空手の稽古以外にも体力トレーニングをハードにやる必要があります。しかし、初心者の場合はそれ以前に、まず空手の稽古を身体で覚えるようにたっぷり行うことが必要なのです。

 これは走ったら体力がつくというような簡単なものではありません。
空手の動きの中で呼吸と身体の動きの調和ができているかということです。

 特に組手の中では、身体は戦闘状態という異常事態に備え、脈拍が上がり呼吸が浅くなってきます。その中で、いわば原始的な体力が求められるます。

 緊急時には、いわゆる「息を呑む」という言い方がされるように、呼吸を止めてしまいます。短い時間であれば呼吸を止めて動いた方が、速く動けてパワーも大きく出せるのですが、その状態で30秒、1分と動き続けることはできません。

 そういった中でも呼吸を整え、冷静に行動できるようになることが、空手の稽古を行なう上での重要な目的にもなっています。

 特に初心者の内は即席・簡単に、強くうまくなれる方法などありません。
「稽古、稽古」です。

 急がずコツコツやっていくことが、実は一番の近道です。
焦らずにマイペースで頑張っていきましょう。


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