人から恨みを買っているのならともかく、まったくの見知らぬ相手から、突然の不条理な攻撃を受けるのはできれば避けたいものです。
答は「YES」です。
通り魔の犯人ような奴は、自分より弱い相手を狙っています。見るからに強そうなイカツいアンチャンが通り魔に遭ったなんて聞いた事ないでしょう?
「何か武道でもやっているかもしれないな」と思わせるだけで、犯人は犯罪の対象からはずすのです。
ただ、空手をやっているから襲われても大丈夫だなどとは絶対に思わないで下さい。
しかし、暴漢に襲われるなど本当の危険にさらされた時、反撃することを躊躇してはいけません。
武道や格闘技をしていない人は「人を殴る事」に慣れていません。だから自分の身に危険が迫っているにも関わらず、相手への反撃に無意識に手加減が入ってしまうのです。
襲われた時にどんな相手にでも一撃でダメージを与えることの出来る場所があります。
普通の人にはそんなことはできません。それは「人に危害を加えてはいけない」という事を小さい頃から社会のルールとして教えられており、そんな事をすれば人としての社会で仲間から孤立してしまうこと、そして法律で罰せられることを知っているからです。
しかし、相手はその法律を侵した「犯罪」をし掛けてきているのです。そんな相手に人としての仲間意識を持って対していたら、本当に殺されてしまう危険があるのです。
普通、同種の生物同士は自らの生存のために争うことはあっても、殺しあうところまでいくことははめったにありません。犬でも仲間同士でケンカすることはよくありますが、
大怪我してしまうような噛みつき方はしません。お互いの優劣が決まった時点で争うことを止めるからです。
これはお互いが共存して生きていくために必要なことだからです。
しかし、我々を襲う現代の犯罪者たちはそんな意識を持っていません。
こちら側は一定の共通理解としての「社会のルール」を守って暮らしている一般的な市民ですから、相手が自分を襲う犯罪者だからといっていきなり目を突くなんて事は普通しないものです。
相手に大怪我をさせてはいけないという気持ちに「無意識」になっているのです。
ところが、それが犯罪者の狙い目なのです。「こいつならそんなに反撃してこないだろう」と思っているからターゲットにするのです。
そうはいっても犯罪者だからといっても手加減なく相手の目を突ける人はなかなかいないでしょう。それどころか人を殴ることさえ怖くて出来ない人も多いかもしれません。
私自身、初めて人の顔を素手で殴った時は手が震えたことを覚えています。
「人に暴力をふるってはいけない」「人を傷つけてはいけない」と子供の頃からしつけられている人ほど、そういった傾向が強いと言えます。
しかし、それでは現代においては「被害者」の立場に立たされることになるのです。しかも、それは最悪の場合「死」という極限のところまで追い込まれる場合があるのです。
そうならない為に、敵に対しては反撃を加えなければなりません。
もちろん相手にケガをさせてしまうと、法律的に罪に問われる場合があります。現在の日本における法律では、たとえ相手が襲ってきた場合であっても、「正当防衛」を主張するにはかなりの制限があり、限度を越しているとして逆に傷害罪になる場合があるのです。
しかし、あなたはこう思うでしょう。
「法律を守って暴行を受けるのを我慢し、後日、警察の力を借りて相手の方が悪かったのだと法廷で証明してもらう」のか。
相手にケガをさせてしまったとしても「自分を守る」のか。
たとえ過剰防衛だとしても理不尽な暴力をふるう相手に対しては、思い切って目を突いてやるくらいのことをするべきです。
それで罪に問われたとしたら、もちろん、その責任は負わなければなりません。それでも「被害者」になるよりはずっと良いと思います。
よく、武道をやっているのだから相手に手出ししてはいけないとか言いますが、それは仲間内のケンカの場合などで、自分の命を守る必要がある時には全力を使って相手を制圧するべきです。
けれど、自分の方が明らかにレベルが上であれば相手にもケガをさせることなく制圧することが出来るかもしれませんが、上に述べたように、そんなレベル差がある相手を襲ってくることはまずありません。
だとすれば、襲われた時に相手を傷付けてでも確実に自分が助かるようにしなければいけないのです。
ところが最近は、相手にケガをさせる=「暴力」という考え方があり、子供の時からそう教えられ、男の子であっても殴り合いのケンカなんかしたことがないという子が多くいます。
社会のルールに守られている場にいる間はそれでいいのですが、相手がそのルールを踏み越えて出てきた時にも、殴ること自体が怖くて出来ないという事態に陥るのです。
自分の身を守る為に、敵に対して反撃を加える「気持ちを持つ練習」として空手は重要な役割を果たします。
「殴る事」も「殴られる事」にも慣れというものがあります。
殴られる事に慣れていない人は暴漢から暴力を受けてしまうと、身がすくんで逃げることも出来なくなる場合があります。
殴る事に慣れていない人は反撃できず、受ける被害が拡大するかもしれません。
そうならない為の練習として空手の稽古は役に立ちます。反撃までは出来なくても、少なくても身がすくんで動けない状態にならなければ、危険な場所から逃げるチャンスが生まれます。
少し護身術を習ったくらいで、相手を倒せるなどとは思ってはいけません。相当に熟練していなければ、そのような技術は身に付きません。
まことしやかに「護身術」を売り物に生徒を集めているところがありますが、そんなところで得た机上の空論は屁の突っ張りにもなりません。一度や二度、セミナーで護身術を体験してもそれが使えることはまずないでしょう。
ただ、「こんな対処の仕方があるのか」と知っておくことで、安心できるという効果はあります。そして、護身術セミナーの果たす役割はそのことに尽きるのです。
危なそうな繁華街を夜に一人で歩かなければならない時、それがどうしても避けられない場合に、襲われるかもしれないとビクビクしながら歩くのと、一応護身術を知っているからたぶん大丈夫だと思えるのとでは、精神的な負担がかなり違います。
実際に襲われる確率はそんなに高いものではありませんから、護身術セミナーを受けたことで安心感を手に入れ、精神的に安定して毎日を過ごすことが出来れば、そのセミナーを受ける価値はあるのかもしれません。
ただ、セミナー経験があろうとなかろうと、どちらの場合も実際に襲われたら被害者になることに変わりはありません。
大事なのは危険な場面に出くわした時にパニックに陥らずに対応できる精神力を養うことなのです。
できることならば争いを避けてトラブルの原因から離れる。それが一番よい対処法だとは思うのですが、こちらが避けようとしても、相手の方が執拗に因縁を掛けて付きまとってくることがあります。
あなたに有り余るほどお金があり、それを相手に差し出して、する必要もない許しを乞うのならばお金をたっぷりと渡してあげればいいかもしれませんが、ほとんどの人はそれほど金銭に余裕があるわけではないし、第一そんなことをすると精神衛生上よくありません。また、一度そういった態度を見せると、繰り返し相手からお金を要求されることにもなりかねません。
はっきりと、イヤなものはイヤだと相手に告げなければなりません。その勇気を持つ事、それは相手が暴力に訴えてきても対処できるという自信があって初めて可能なものなのです。
その自信を持つために、空手の稽古を行なうことが役に立ちます。一度や二度の体験ではなく、繰り返し汗を流して下さい。技術的には勿論ですが、知らず知らずのうちに精神的にも成長してゆき、自分自身が「強くなった」と実感できるようになると思います。
(ただ、稽古すればするほど「自分はまだまだ」ということに気付く人の方が多いんですけどね。)