professional


プロの指導者


instructor
 一口に「プロ」といっても「プロ」という言葉にはいくつかの異なるニュアンスがあります。
 一つにはそれを職業として生活の生業とする「プロ」、つまりそれを収入源としている「プロ」です。
 もう一つは専門家としての高いレベルを示す「プロ」で、「その道のプロ」という言い方は、ハイレベルな知識や技術を持っている人達を指すとして一般にも理解されていて、プロフェッショナルなレベルという言い方もよくされます。

 それに対して、お金を稼ぐ「プロ」には広い幅があり、ちょっと教えてあげた程度でも指導をしたお礼として対価を受け取ったと見れば、それは「プロ」としての仕事になるわけです。

 例えば、引っ越しの専門業者に引っ越しを頼むのは「プロ」に仕事を依頼していることになるのですが、当日に来たスタッフにアルバイトの学生が混じっていたとしても、それは「プロ」として仕事をしているわけです。
 ここで言う「プロ」とはやった仕事に対して対価が発生しているかどうかが基準になります。

 スポーツのプロと言えば、野球やサッカーなどのようにプロ同士の対戦を観客に提供することでお金を稼いだり、賞金ツアーに参加して勝つことでお金を得るプロがいます。

 また、それとは別にレッスンを受け持つことで指導料を取る「レッスンプロ」という存在があります。ゴルフやスキー、テニス、水泳などが代表的なものですね。

 ここでは教えることで対価を得るという意味での、「プロとしての指導者」について考えてみたいと思います。

 ゴルフやテニスのスクールで指導している人は「プロ」としての資格をその競技団体から認定されていることがほとんどです。
 キチンとした全国組織がある競技は「プロ」としての資格認定制度が整っていますが、武道ではそのような制度はまだ確立されていません

 フランスでは既に競技人口が遥かに日本を上回っている「JUDO」で、指導員は国家資格となっているそうですが、日本の場合はまだ競技団体内部の申し合わせ的なものに過ぎません。更に、空手の場合は組織自体が何百(何千?)とあるのでその「プロ」としてのレベルはまさにピンからキリまでの状態です。

 そんな状態が良いわけないので、スポーツ指導者の資格を国家資格にしようという動きもあるようですが、空手はその中身自体が流派や試合ルールによって全く違うものなので統一するのは不可能ですし、こちらの内容をよくわかっていないところから、「指導者資格を認定します」なんて言われるのは「余計な御世話」というものです。

 スポーツの場合は国が基準を決めてそれに従って指導員資格を設定するのもあっていいとは思いますが、武道の場合はそれを誰に習ったのかが重要なのであって、師が弟子に精神的なものを含めて伝えていたことを、国が一律に認定するというのには承服しかねるものがあります。

 ゴルフやスキーなどは統括する競技団体が指導者資格を認定していますが、あくまで民間資格であり、別にその資格がなくても指導することはできますし、法律違反なわけではありません。その認定団体の中でだけ通用する資格なわけです。
 ただ、それを公的機関が認める形で運用が始まると、それがデファクトスタンダード(業界標準)とされて、その団体以外のものが排除されるようになってしまいます。
 別に関係しない団体の認定などどうでもいいと言えばその通りなのですが、公的機関と結びつくことで税金などからお金がその団体に入っていくようになったり、更にその特定団体の権益が強くなって自分のところの優先的取り扱いを求めて業務独占資格にまで引き上げられてしまうと、その他の団体は自派での指導も自由にできなくなってしまいます。そうなると、それは違うんじゃないかと思うのです。

 現在、日本のスポーツ全体を統括しているのは文部科学省ですが、その下にあるはずのJOCが大きな力と権限を持っています。そして、プロスポーツはその管理の外にあり、指導者資格は各競技団体が独自に認定しています。
 競技としてのスポーツ資格ならば、その種目のルールが最優先されるものであり、そのルールに則ったやり方で技術が向上していくようになるものですが、空手は闘争の中から取捨選択した技術をベースに武道の種目としているので、そのルールの幅は寸止めからフルコン、グローブ空手まで非常に広い範囲に拡がっています。それらすべてを網羅している団体はなく、当然そのすべてを指導できる組織はありません。
 その中の一種目スポーツとしてルールを決めて行うのに異論はありませんが、それが唯一のものだと指定されるのは納得できません

 根本的にスポーツと武道ではその目的が違うのですから、それを一緒くたにして指導者の認定まで公的機関が行うというのがおかしいのです。
 一部の組織や団体、個人にのみ利益を供するような資格は公的なものとして認めるべきではないでしょう。
 そんな外側から資格を押し付けられることがないように、空手指導者は「プロ」として技術も指導内容も高められるよう自ら努力していくべきだと思います。


inserted by FC2 system