試合で見掛ける少年部の親


一度自分でやってみたら?
先日、観に行った大会でこんなことがありました。

母:「なんで蹴れって言ってるのに蹴らへんねや!

試合に負けて戻ってきた小1の子に母親が怒鳴りつけています。子供は涙ぐんで答えることができません。

泣けって言ってない。なんで蹴らんかったんか言えって言ってるんや!」

と、更に続けます。
私が座っていたすぐ横で怒鳴っていたので会話が全部聞こえてきます。

詰まりながら話す子供の話を要約すると、試合前に同じ道場の空手仲間(当然、小学生でしょう)から「いっぱい突け!」とアドバイスをもらっていて、それで蹴りにまで気が回らなかったようなのです。
私から見れば、その子はもらったアドバイスを一生懸命に試合で実行して頑張った、素直ないい子です。今回の試合結果は負けであっても、こんな子は必ず伸びる子です。

ところが母親は、理屈で子供を攻めます。
「それは突きをいっぱい使ってどんどん攻めろってことやろ!誰も蹴ったらアカンなんて言ってへんやろ!」
と取りつくシマもありません。

もちろん母親の言ってることはその通りだし、間違いではありませんが、必死で試合している小学校1年の子供にそこまで求めるのはどうなんですかね。
一度自分が試合に出てみれば少しはわかると思います。試合がどれだけ緊張するものなのか、しんどいのかが。

少年部の大会に行くとこの様な光景がアチコチで見受けられます。負けて戻ってきた子の頭を張り倒している親もいます。

こんな親を見ると「自分でやってみろ!」と言いたくなります。

最近は親子で空手を習っている人も多く、試合に出た経験がある親ならとてもこんなことは言えません。なぜなら試合は傍で見ているより、ものすごくしんどいものだとわかっているからです。しんどいだけでなく試合中の油断は即ケガにつながりますから、途中で気を抜く暇もありません。

子供の試合は大人と較べるとパワーが弱いので大した事がないように思えるかもしれません。しかし、やっている子供たちの恐怖心と戦う気持ちは、全日本大会に出る選手の気持ちと変わるものではないのです。

だから試合で負けた子もホメてやってほしいのです。もちろんダメであった部分は次に向けて努力しなければなりませんが、試合で負けて一番落ち込んでいる時にさらに追い討ちを掛けるようなことはしてほしくありません。


ただ、このように厳しい親の元で試合に勝つための努力を続けている子供は、実際強くなっていくんですよね。
空手の師範といっても、週に1、2回の稽古で2時間程度の指導しているだけですから、生活を共にしている親の指導にはかないません。

しかし、それがよい方向へ向いている間はいいんですが、往々にして親は目先の試合の結果しか見えていない場合が多くあります。

子どもは自分が試合で勝った結果よりも、試合に勝ったことで喜んでいる親の顔が見たくて頑張っている場合が多いのです。

ですから、思春期を迎えて親離れが始まると、親から怒鳴られてまでつらい稽古を続けたいとは思わなくなり、空手自体を続ける意欲までなくなってしまうのです。

小学生の高学年でもう既に燃え尽き症候群になってしまい、空手から離れていく子供が多いのは非常に残念です。もっと長い目で空手を学び、生きていく道として「武道」の空手を学んでほしいものです。


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