空手を
商売として考えてしまうと、お金を払ってくれるのは親ですから、
親の意向に引っ張られてしまうことがあります。
もちろん、子供がこのように育って欲しいという
親の期待に応える指導はなされるべきだと思いますが、それが
自分の子だけがよければいいというような自分勝手なものであってはいけないと思います。
強い子供の親によく見られる現象ですが、子供が強いと保護者の中での立場も強くなるようです。
そして保護者の中で派閥ができたりして、弱い子の親はそんな派閥のリーダーの顔色を伺い、おべっかを使ったりするようになるそうです。
そうなると指導者より派閥のボスのいうことを重視しだし、子供が試合に負けたりすると指導者のせいにしたりして、
指導方法にまで口を出してきたりするようになります。
空手をやっているのですから
強いのに越した事はありませんが、子供の内は特に、
一生懸命やる事のほうが大切です。その事を忘れて目先の試合の勝ち負けに拘り、勝ったときには当然とおごり高ぶって、負けると試合相手の戦法を責めたり、ひどい時には審判に食って掛かって
判定をひっくり返そうとしたりする事さえあります。
親が自分の子の良いところしか見えないのは仕方ない部分もあるかもしれませんが、指導者までもがそれに引っ張られて冷静に試合を見れなくなってしまってはどうしようもありません。
指導者自身が生徒の勝負に
熱くなって冷静さを欠いてしまうのは、ある意味一生懸命な指導の表れかもしれませんが、本当は自分でも
「負けで仕方無い」と思っていながら、保護者の意向に沿うために判定に文句を言うようになってしまっては、武道としては
道を見失っていると言われても仕方ないでしょう。
少年部での指導においては、
保護者の協力無しでは円滑に進める事ができませんが、それをベースに置いてしまうと大きな過ちを犯してしまう事になります。
親は基本的に
自分の子供しか見えていません。それは言わば当たり前のことなんですが、試合によく出る子の親になると、空手を見る目もそれなりに肥えてきますから「自分の子」以外のことについてはかなり良い認識眼を持っていたりします。だから余計にその発言が重視されるのですが、道場の指導者がそれに引っ張られてしまってはいけません。
親の方も自分の判断にかなり自信を持つようになり、
「こんな先生はダメだ」とか言い出して、取り巻きの親と子供を引き連れて別の道場へ移ったり、ひどい時には自らが
空手の先生を名乗って独立して道場を構えたりする人が出てきたりします。
空手の指導を生業にしている人からすると、
会費を払ってくれる「お客さん」が減ってしまうと困るものですから、
そんな親のご機嫌を取るようになってしまうのです。
本気で空手に取り組んでいる指導者なら
そんな事は絶対にありませんけどね。
空手を習っているのは子供なんですから、
その子への対応を中心に見るべきです。そして必要があるなら、その子にとって厳しい態度も取らねばなりません。たとえ、
家に帰って不満をこぼしても、です。
そして、そんな時こそ子供を励まし、頑張らせるようにしてやるのが
親の役目ではないでしょうか。
ところが我が子カワイサだけの親は、自分の子に厳しくされると、
もうそんな先生に教えてもらわなくてもいいと子どもに言うようです。結果、物事を最後まで頑張る事のできない子供になっていくのですが、空手の先生に道場生の指導はできても、
親の指導まではできません。そして残念ながらそのまま道場を離れていく事が多いのです。
親の方から相談してもらえれば、もちろん一緒になって子供を成長させていく
お手伝いはできますが、甘い親は子供の目線に立ってしまい、指導者側の考えについていけないことが多いようです。当然ですが、子供を育てる
最終責任は親にあります。ですから、親がもう空手を習わせる必要がないと言えば、空手の指導者にはどうしようもありません。
子供に迎合し、親の機嫌に沿って指導すれば、その子は道場に残り、その仲間の親も巻き込んで続ける子供は多いかもしれません。
けれど、指導者がそんな態度を取っていると、
冷静に見ている他の親はちゃんとそれを見抜きますし、子供たちも良くなっていくわけありません。狭い道場内だけの
井の中の蛙状態で満足してしまいます。
更には、そんなやり方で子供を教えている指導者を見て、本気で武道を学びたいと思っている
大人の道場生が離れていく事になります。
道場運営の面だけで見れば、
1人の大人より5人の子供がいた方が収入は良いかもしれませんが、それで武道を名乗って欲しくありません。
「武士は食わねど高楊枝」という諺には
やせ我慢のニュアンスがありますが、武の道を歩くということは
そんなものだからこそ、こんな諺があるのだと思います。
「たらふく食って高楊枝」してる武士って何かさもしい気がしませんか?
空手の指導で充分な報酬が得られればなぁとは思いますが、何を優先にしているかでその指導者の
「本物度」がわかるのではないでしょうか。
空手を学ぼうとする人たちには
「本物の空手」を選んで欲しいと思います。
以上、5回に渡って道場運営について述べてみましたが、空手を教えている人たちはこういった様々な条件をクリアしていき、自分の理想とする空手と道場経営のバランスを考えて折り合いをつけながら、日夜悩みつつ指導していることを、知っておいてほしいものです。
「道場運営について」
項目内リンク
@理想と現実の狭間で
A会費の額の妥当性
B審査費用の額
C会費以外の費用や手伝い
D保護者への対応