専業 or 兼業


道場運営について@


理想と現実の狭間で
 空手を指導している方には大きく分けて2種類の人がいます。
 すなわち、それで生計を立てている「プロ指導者」と、平日昼間は本業の仕事をしながら、夜間や土日などに仕事の合間を縫って指導されている方です。

 空手指導者の9割以上は別に本業を持って指導されている人達ではないでしょうか。
(単純に私の感覚です。調べたわけではありません。)

 習う側から見た良否は「道場の選び方」に書いていますが、ここでは指導する側の視点から道場運営について考えてみたいと思います。

 一般の道場生の方にとっても、指導者がどのように道場運営をしているのかを知ることは、自らの道場選びをする上で役に立つでしょうし、自分が支払った会費などの内訳を知ることで、ノーブレスオブリージュの観点からも組織に対しての役割を考えてもらうために有用なことでしょう。

 指導者が自分一人で曜日や場所を替えながら道場を回り、何百人も道場生がいれば、その収入で生活していくのも悪い事ではないと思います。それどころか好きな事を仕事にできるというのは羨ましくさえあります。

 けれど、それは「好きな空手」を教えているからであって、それを生活の糧にしてしまうと、その為に「好きな空手」で我慢しなければならない部分が出てくることがあります。

 勿論、それはどんな仕事にでも言えることであり、収入を得るためには仕方ない事だとも思います。
 けれど、それが行き過ぎてしまうと、何のために「好きな空手」仕事にしているのかという事にならないでしょうか。

 覚えの悪い子や運動神経の鈍い子にも根気強く教えていくのは、指導者として当然必要な事ですが、技もできておらず、型もキチンと覚えていないような子をおだてて辞めないように気を使い、どんどん帯を上げて昇級させていくようなやり方には賛成できません

 むろん、子供が空手を楽しみ、喜んで道場に通って楽しく稽古しているのは良い事だと思いますが、それが空手を習う事のメインではないと思います。

 「武道」を指導しているなら、できなかった事ができるようになる為の「努力を続ける大切さ」を教えるべきではないでしょうか。

 ダメなことはダメだと言い、厳しい稽古を乗り越える場道場であって欲しいものです。

 とは言っても、道場を運営していくのは、実はけっこう大変です。
 それに掛ける労力と時間は、得られる収入を考えれば別のアルバイトでもしている方が割がいいかもしれません。特に道場生が少ないところは本当にたいへんです。「好きだからできる」と言っていいものでしょう。

 私の友人が独立し、道場を立ち上げてまだ間が無い頃、新規入会者が来ると「涙が出るほどうれしい」と言ってました。
 彼は空手の指導だけで食べていく決心をしていましたから、その気持ちはよくわかります。

 他にも、一旦は「空手で飯を食っていく!」と奮起して道場を立ち上げたものの、あまりに収入が少なく、妻子を養う為にアルバイトを始め、現在も「兼業空手家」としての生活を続けている人もいます。生計を立てていくためにはやむをえない事でしょう。

 ある程度、道場生が集まれば、空手の指導で生活していく事も可能ですが、健康保険の費用や年金を支払い、ボーナスも無く、怪我をしたり病気になったら収入が途絶えてしまう不安定さを考えると、空手一本で生活していくのも厳しいものがあると思います。

 そんな中、専業で空手を教える事を生業にしていく中で、得られる収入の方に目が向いてしまう人がいるのも事実です。

 キチンと空手を指導した対価として指導料を受け取るのに何も問題はありませんが、得られるお金の方を重視するようになってしまっては本末転倒と言わざるを得ません。
 苟くも「武道」を教えているのですから、その道から外れるような振る舞いは慎むべきです。

 次回から数回に亘って私が考える、これはどうなのかと思える事例を挙げて考えてみましょう。

「道場運営について」
項目内リンク
A会費の額の妥当性


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