試合

本戦マスト


持論

 空手を学ぶ上で試合は必ずしなければならないものではありませんが、試合を一つの目標として稽古をしていくのは意欲を高めるのにも役に立つものです。
 特に少年部においては試合での勝敗によって稽古を続ける意欲を左右されることが多いようです。

 新型コロナの影響で、中止や延期などで大会自体が開催できない状況が続きましたが、最近になってようやくマスクやフェイスシールドなどの感染防止対策を講じれば試合を開くことが許可されるようになってきました。

 試合の形式においても感染対策として試合時間を短くする方向で調整され、延長戦なしで本戦マストの判定を採る大会が増えました。
 審判からすると本戦で赤白両者ともに元気な攻防が続く中でどちらかに旗を挙げなければならず、僅差の判定で悩まされることが多くなります。

 これまででしたら初めのうちは元気に技を出していた選手が延長でバテて動きが止まることがあり、そこで判定になるとバテた方が負けとなりました。

 だから途中でバテないように稽古でしっかりと動くトレーニングをするのですが、年齢が上がるにつれ、延長、再延長を見越して試合前半ではあまり技を出さず、体力を温存させる選手が増えてきます。試合の後半でも動き続けられる方に判定で旗が挙がるのですから、そのような戦い方をする選手が増えるのは当然の成り行きでしょう。

 ルールに基づいて試合をするのがスポーツですから、そのルールの中で勝てる戦い方が増えるのは当たり前の話です。しかし、そんな戦法の者同士が試合をすると、試合の前半は見合ってあまり動かず単発の技をチョコチョコ出すだけでラスト30秒だけ猛烈にラッシュする展開となります。そのラッシュの攻撃も相手に効かす攻撃ではなく、相手に技が入ろうが、入ってなかろうが関係なく、ただ、とにかく技を出し続けるというのが多く見られます。効かない技であっても休まず連続攻撃で攻めてくるので、技に反応して相手の攻撃を受けていたらそのまま試合終了の笛が鳴ってしまいます。そうなると判定負けになるのですから、それに対抗するには同じように効かなくても技を出し続けなければなりません。

 もちろん、その内のどれかがクリーンヒットすれば、「技有り」を奪えますし、何より判定では(効かなくても)出した技の多い方が優勢と見られるのですから、そんな戦い方をする選手が増えるのも当然でしょう。

けれど、「武道」としてみた場合、その戦い方は正しいのでしょうか。

 もし、町で絡まれて戦わなければならなくなったとしたら最初から全力で戦わないわけにはいきません。実際の戦いでは「先手必勝」で、2、3分相手が動いてバテてから反撃しよう、なんてことには絶対になりません。(よっぽど実力差があったら別ですけどね)

 ですから、試合開始と同時に全力で技を出し合うというのは、本来の戦い方に則ったものだと思います。

 それに本戦マストで判定が出るのだとしたら、延長に備えて体力温存なんてのも必要なくなりますから、初めから選手の持つ能力を発揮したパフォーマンスが見られるのではないでしょうか。

 いっそのこと一般の大人の大会でも本戦マストにした方が、ダラダラ延長をするよりも全体の進行が早くなりますし、キビキビした戦いが見られると思うんですが、そこまで思い切った大会運営をするところは今のところ見られないですね。


inserted by FC2 system