率先垂範2
道の実践
先日、少年部の大会でこんなことがありました。
昼食後にトイレに行った時のことです。
大きな体育館のトイレですから、入口にはトイレ用のスリッパが何足も置いてあります。子どもたちは言うまでもなく、大人でさえもトイレから出る時にスリッパをそのまま脱ぎ散らかし、入口に散乱している状態でした。
どこでも大きな大会となるとたくさんの流派、団体が来ますから、応援に来ている人まで含めるといくら武道の大会とはいえ、マナーの悪い人も大勢います。
ここでも例に洩れず、自分が履いたスリッパさえ揃えられない大人に、そんなマナーの指導を受けたこともないような子どもたちで溢れかえっていました。
私も、一応は武道の指導者として、道場では注意をしているのですが、さすがに大会会場では、自分の門下生でもない者が多人数になると見過ごしてしまうことが多くなります。
洗面台で手を洗いながら、ふと前の鏡を見ると、私の後ろで小柄な年配の方がスリッパを並べている姿が映りました。
初めは体育館の清掃職員の方か?と思っていたのですが、そうではありませんでした。
その大会に参加していたある流派で、トップの右腕として活躍されている方です。
私は見過ごしていた自分を恥ずかしく思うと同時に、その行為に頭が下がる思いでした。
私も道場では自分の使ったものでなくても、トイレのスリッパはキチンの並べなさいと指導もし、自らもそうしてはいるのですが、残念ながら一般の体育館でその行動を取れるほど人間ができていません。
しかしその方は誰が見ているというわけでもないのに、ごく自然にたくさんのスリッパを手際よく並べ直し、何もなかったかのようにトイレを後にしていきました。
まさに「日々是道」といった風情の自然体です。
武道家とはかくありたいものだと感銘を受けた出来事でした。
武道家というと回りを威嚇するかのような強面の人を想像しがちですが、このように当たり前のことをごく自然に行えるようになることに、武道が他の格闘技と一線を画す重要なポイントが現れているのではないでしょうか。
これこそが「道」と言えるものだと思います。