組織の運営


ホウレンソウ


報告・連絡・相談
 ホウレンソウとはビジネスでよく使われる用語で、報告・連絡・相談の略称です。この三つをキチンと実行できないと組織としての運営がうまくいかないというものです。

 少し前の事ですが、一般部の女性の道場生から次のようなメールがきました。他の道場の女子部同士で仲良くなった人達と合同稽古&飲み会の企画が出た時にやり取りの中で疑問に思ったことを聞いてきたものです。

 固有名詞を省いて主要な部分を引用してみます。

 「昨日会場にいた(他の道場の)人も誘ったみたいで、その人が「道場の許可が出たから参加します」と言ったので、私が「許可とかいるんですか?私は(師範に行っていいかを)聞いてないです」というとびっくりして、仲良しクラブじゃあるまいし、私らのレベルの者でも一応看板背負ってるから当たり前!というように言われました。私としては、直接空手に関係ない外での交流に問題があるという認識がなかったため、今までにも一緒に試合観戦に行ったりしてました。むしろそうやって切磋琢磨できる交流は歓迎されるものと思ってました。そこで、そのような報告や許可が必要なのか教えてください。もしかしたら今まで知らず知らずのうちに、他のことも含めて師範に失礼なこと、ご迷惑なことをしていたのかもしれないと思うととても気になりメールさせていただきました。」

 これに対して私は次のように返信しました。

 「一応、空手関係の場合には話を聞いておかないと、後日に向こうの師範方とその話になった時、知らないというのは組織として統制が取れていないと思われるので言っておいてもらった方がいいです。
 けれど女性の空手人口は少ないので違う道場でも仲間ができるというのはとてもいいことだと思います。どんどん交流して稽古の励みにすれば良いでしょう。」

 どうでしょうか。このやり取りを見て、
 「そんな細かい事を一々報告するのは面倒だな」
と思われた人もいるかもしれません。しかし、それについての答えは上記のやり取りの中にもう既に出ていますが、わかりやすいようにもう少し詳しく説明しておきましょう。

 後日、その道場の代表の方と大会会場で顔を合わせた時に
 「ウチの○○がお世話になりました。」
 と挨拶がありました。

 自分のところの道場生が他の道場の人にお世話になったのならば、後日、会った時に一言お礼を述べるのは「礼儀」=「常識」でもあります。ところが、そういったこと(合同稽古&飲み会)があったというのを知らなければ、当然お礼を言うことはありません。

 これが相手に対して「失礼な事」になるというのは理解できるでしょうか。

 つまり、「自分の道場生が世話になっておきながら、礼の一つも言えない奴」だと相手に取られかねないのですから、自分の師に「恥を掻かせる」事になるのです。たとえ飲み会であっても「道場の看板を背負っている」ことになるのですから、行くのにも「了解」を取るべきだし、終了後にも「報告」は必要だと思います。

 そんな事を言うのは小ウルサイだけなのでしょうか。

 私的な飲み会なのに一々そんな了承を得る必要があるのか?と、思われるかもしれませんが、組織を通して知り合っているわけですし、それぞれの所属する団体が別の場で交流を持っているのに、その団体の長が知らなければ恥を掻かせることになるのです。

 これも少し前の話になりますが、別の道場で師範代までされていた方が、除名されるということがありました。けっこう一生懸命に稽古していた人であり、大会などの運営でも率先してやっていた人だったので、そこの先生に直接理由を尋ねてみると次のようなことがあったというのです。

 稽古が休みの日に本部道場を使って他の道場に声を掛けて合同稽古を行なったというのです。
 それが何か問題なのか?と思われる方も多いかもしれませんが、そこの代表の許可を取らずに勝手にやっていたというのです。

 稽古が無い日だったのですが、たまたま用事があって道場へ行ったら他の道場の人たちが大勢いて何か稽古らしきことをしている。自分は事務室で用事を済ませていたのだが、他の道場から来ている人にすれば、その道場のトップがいるのに顔も出さないとなると、失礼な対応だと取られてしまいます。
 他の道場の人にすれば、本部道場で合同稽古が開かれているのなら、そこの代表から許可を得ていると考えるのは当然だからです。

 だから事前に相談して許可を取る事が必要なのです。

 合同稽古を企画した人からすれば、頑張っていろいろと計画して空手を頑張っているのだから何が悪いのだという意識があったのかもしれませんが、トップの了解を得ておくというのは最低限やっておかなければならない事でしょう。

 細かい内容に口を出すのではなく、「知っておく」事自体が大事になるのです。そうでないと他からは組織として統制が取れていないと見られるからです。
 上の者が知らなければ、あそこは下の者が好き勝手に動き回っていても管理できない、抑えることができないのだと見られるのです。
 つまり、それは上に立つ者の力量が問われるということであり、それができていなければ、たいしたことがない奴だ(組織だ)と思われる、ということです。

 上記の人はそういったことが理解できなかったようで、同じような事を何度も繰り返すので除名処分にしたのだとその先生は仰っていました。

 個人として師弟のやり取りを学ぶだけではなくて、自分のいる組織と他団体との関わり方をも学ぶことができるのだと考えれば特別な事ではないと思うのですが、そう思えない人も多いみたいです。

 こういった「ホウ・レン・ソウ」が必要なのは武道の世界では当たり前のことなんですが、最近の社会では、それはそれ、これはこれ、で、まったく別物だと思っている人も多いようです。
 空手は武道として、人としての生き方を教えるものでなければならないし、他の団体との交流があってこそ、このようなことも知ることができるのです。

 幸い冒頭に挙げたウチの道場生からは、
 「報告の必要性についても理解したので今後は報告するようにします。」  と返信がありました。
ものわかりのいい道場生で助かります。


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