ヘッドギアについて


マスク無しのヘッドギアを使う理由 2

試合での公平性

 最近の空手界において少年部大会の情勢を見ると、関東では前面マスク付きを使用しているところが多く、関西ではヘッドギアだけのところが多いようです。
また、流派で言うと大手のK会館は少年部の大会では前面にネット付きを使用することに決めているようです。

 「マスク無しのヘッドギアを使う理由 1」に書いたように、マスク付きを使用する大会というのは単に安全面から使っているだけではなく、大会の運営を円滑に進める為という大人の都合で行なっている部分が多くあります。

 たとえ軽いパンチであっても直接顔に当たると、本人も審判もダメージがあったことを見て取ることができます。
 しかし、気合が入っている子ほど少しくらい顔に突きが当たっても、ひるむことなく相手に向かっていきます。審判から見た場合、多少パンチが顔面に入っていても、やられた側の選手が動きを止めず試合の流れが続いていたら、試合を止めずに続行させる場合が多くあります。
 つまり殴られる側が我慢強いほど、強いパンチが当たったとしても反則は取られず、相手は殴り得になってしまうということです。
 しかし痛さは我慢していても、アゴをかすめたパンチは脳が振られるため、平衡感覚に影響を及ぼします。
 結局、マスクを付けることによって、直接受ける打撃の痛さは我慢できるレベルが上がり、それにつれて身体が受けるダメージも大きくなっていきます。
 安全のためといいながら、実はマスクを付けることによって反則を取る割合が減り、顔面を殴られた方が損をする事になるのです。

 大人の試合でマスクを付けるのならば、顔面へのパンチを認めるべきです。そうでなければ不公平になります。
 大人になればパンチ力は増大するのに、我慢強さは子供の比ではありません。
ということは、脳へのダメージは比較にならないくらい大きくなっていくということです。基本的に子供も大人も「脳組織の強度」には差がありません。身体ならば大人がトレーニングで鍛えることで受けるダメージを少なくさせることはできますが、脳の組織自体が衝撃に強くなるなんてことは有り得ません。

 頸や肩の筋肉を鍛えれば脳が振られることを少なくすることはできますが、それも顔面有りルールの場合で、あらかじめわかっていた上でアゴを引いて力を入れているからできることです。
 顔面を殴られるものとして身構えているのと、顔面パンチはないものと想定しているのとでは当たった時のダメージがまったく違います。

 顔面パンチを反則としているなら、手による上段への打撃があった時にはそれを反則として取らなければ試合が成り立ちません。
 やられる側の「我慢」によって反則を取る基準が変わっては、反則する側の殴り得になってしまいます。反則するほうが得をするような試合公平ではありません。

 お互いに公平なルールでないのなら試合自体行なう必要がありません。

 空手の技術というのは、本来「何でもあり」ですから、道場の稽古ではいろいろな場面を想定して稽古することも大切かもしれません。しかし、自分の技術の向上を確かめ、さらに上達していくために、今の自分の技術を試す場として「試合」があるのです。

 試合というのは、お互いが同じ条件の下に戦うから成り立つのです。
「ウチの道場では関節技もやっているんだ」といっても普通の空手の試合では使えません。

 極端に言えば、試合開始と同時にピストルを出して相手を撃って
「空手は銃にも対抗できないといけない」
などと言っているようなものです。
 護身術として考えておかなければならないことと、試合で技術の向上を目指すということを混同してはいけないのです。

 そして同じルールの下で戦うから精神的にも強くなれるのです。不公平なルールだと、自分に有利なルールで勝って当たり前だし、不利なルールだったら負けてもそれは自分の実力不足ではないという言い訳ができてしまいます。そんな状態で試合をしても精神的に向上することはありません。

 人間が審判する以上は完璧な判定ばかりではないのかもしれませんが、不公平を認めているルールを用いるのはよくありません。

 顔面に入ったパンチをどこまで反則に取るかといった判断は難しい部分があります。しかし、人が審判をするという判断の幅を含めた上で、キチンとルールに則って試合を行なうということが、参加した選手の精神的な向上を促すのだと思います。

 以上のことなどから、少年部でマスク付きのヘッドギアを使用する場合には、大会運営上で気を使わなければならない部分が多くあり、進行しやすいという都合だけでマスク付きを使用させるのは、青少年の精神力育成・向上の面においても多くの問題を抱えていると思います。

 3、「空手に対する認識」 へ続く


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