審査基準について

審査のいい加減さ
 これは入ってからでないと確かめられないのですが、友人が先にやっている場合などは聞くことができると思います。

昇級のペース
 空手を始める人にとって、黒帯を取るというのは大きな目標の一つでしょう。
 どれくらいの期間で黒帯になれるのかはとても気になるところです。
 なるべく早く黒帯になりたい気持ちはわかりますが、あまりにも短期間で黒帯になれますというところは気を付けた方がいいでしょう。

 アメリカでは空手の道場に入会する前にそれを確かめる人が多く、電話の問い合わせで
 「2年から3年・・・」
 と答えると、電話を切られてしまうそうです。
 向こうには3ヶ月くらいで黒帯になれるところがけっこうあるようで、厳しい稽古の結果として手に入れる黒帯より、簡単に「ブラックベルト」を取れる方を選ぶ傾向があるようです。

 しかし、本当に大事なことは黒帯としての実力をキチンと身に付けているかどうかですから、そんないい加減なところで習うくらいなら、スポーツ店に行って自分で黒帯を買ってきて締めてればいいんです。(実際にそんな空手の先生もいてます。)

 いろいろな道場での様子を見てきた結果と、私のこれまでの経験からしても初段を取るのに最低2年は必要だと思います。
 もちろん、それは稽古を行なう頻度と係わってきますので、内弟子みたいに四六時中稽古している人間は昇級が早くて当たり前でしょう。
 しかし、空手の基本的な、動き、を覚え、組手も黒帯として恥ずかしくないレベルに到達するには1年ではまず無理です。
 よほど運動神経がよくて、物覚えの良い人であれば飛び級で昇級し、2年以内に黒帯になることもあるかもしれません。
 しかし、
 「俺は強いからすぐに黒帯にしろ。」とか、 「三段のヤツに勝ったから俺は四段だ。」とか言うバカタレがたまにいてますが、そんなヤツは武道のことを何もわかっていないアホンダラです。

 武道の段位はいわば「資格」の範囲に入るもので、ボクシングなどのランキングとは違う価値観で位置付けられているものです。
 不祥事を起こしたりしてその団体から資格を剥奪されなければ、普通、取得した段位は一生無くなったり下がったりするものではありません。

 武道に「道」の字が付いているのは、単に武術に優れているからだけでなく、武術を修行することにより生きていく道筋を学ぶ課程を「」として示しているから「武道」なのです。
 ボクシングのランキングは単に肉体的な強さを示しているものであり、試合に負ければ順位が下がります。しかし、武道の場合には究極的には、いわば真理に近づいていくことが求められているのであって、人との勝ち負けを問題にはしていません。
 その真理に近づいてゆく過程の段階を踏んだ目印として級位や段位があるのです。
 技を知識として覚えただけでは不十分であり、身体が技を覚えるには時間が掛かるものです。ですから飛び級で昇級するのには限界があるのです。

 単に組手に強いというだけで黒帯になれるところがあるとすれば、その道場が「強ければそれでいい」式の考え方をしているところであり、文化的価値や精神的な成長をまったく省みない指導を行なっていると見て間違いありません。

 黒帯というものは「自分の流派の空手技術をここまで覚えたから黒帯を締めることを許可する」と、その団体の代表者が認定をするものです。型も基本も関係なく、単に強さだけでランクが上がるようなシステムならば、空手を名乗らず別の名称を使ってもらいたいものです。
 単に強いだけで級が上がるというのは「空手」という武道の中で考えればおかしい話なのですから、審査の基準がハッキリしていないというのは、すなわちいい加減な団体の証拠であるとも言えます。

 級分けは空手の初期からすると、どの流派もかなり細かくなってきています。
 「唐手」から「空手」に変わってきたあたりで柔道のシステムを取り入れ、初段で黒帯を締めるというスタイルが出来始めた頃は、白帯と黒帯だけとか、白帯、茶帯、黒帯の三段階しかないところがほとんどでした。しかし、空手が広まっていくにつれ、初段のレベルに到達するのにかなりの時間が掛かることから、稽古を続けていく上で励みとなるように級を細分化し、帯の色を分けていくようになりました。
 私の知っている範囲で級を一番細かく分けているところでは、なんと12級から始まっています。そして黒帯になるのにも「初段」とか「初段」とか作っているところもあります。その違いは何なのかとも思うんですが、それはその団体の考え方ですから何とも言えません。
 しかし、習う側からすれば何の技術をどれくらいできたら何級合格なのか、ということがわからないと頑張る気持ちが出てこないでしょう。

 怪しげな団体ではこのあたりがいい加減で、審査も先生の目分量みたいなもので決められていたりする場合があります。
 個人的に教わるには技術や人格が優れている指導者が良いかもしれませんが、黒帯になるまでの審査基準が組織としてハッキリしていないところはあまり良いとは言えません。

 名人のような方で、ハッキリとした審査基準を決めずに黒帯を認可している人もおり、それはそれでひとつの教授のやり方だとは思います。けれどマニアックに空手の技術を覚えたいというならそれでいいかもしれませんが、普通に空手を習って黒帯を取りたいという人には、そのような指導法だと、何を、どこまで、どのように努力すればいいのかがわかりにくく、黒帯を取るまでのモチベーションを維持するのが大変だと思います。


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