大会は誰のためにやるのか?


選手のための大会運営


指導者の役割

 少し前に、ある大会にウチの道場生が出るので観に行った時のことです。そこの代表の方と本部席で話をする機会がありました。

 彼は若い時には細身の体ながら他団体から大手の大会に参戦し、KOのヤマを築いて優勝した実績のある、ものすごく強い方です。
 当時、他団体からの優勝は初めてということで話題にもなり、他流でも勝てるということを示してくれた彼は、現在は空手の指導を本職として活動されており、これからの空手界の発展を担う方です。
 誰が見ても文句のない実績を上げている方なんですが、普段のスーツ姿を見ていると細身のヤサ男で、男前でカッコいいので一見ホスト風にも見えてしまうくらいです。

 大会で話をする時などは本当に丁寧に対応されますし、普段しゃべっている時はメチャメチャ低姿勢です。トップがそうですから、大会スタッフもよく動いてました。

 彼とは細かい点で微妙に意見の食い違うところもあるのですが(心臓震盪予防の胸サポーターの件とか、体罰に関する考え方とか・・・ですね)、空手に対する基本的な考えの方向性が私と同じであり、私がアイディアとしてだけ持っていたことを実際に行動を起こして実践されていたりするので、本当にすばらしいといつも感心させられています。

 で、その方と大会本部席で試合を観戦しながら話をしていた時なんですが、判定で主審と副審の判断が割れて勝ち負けが入れ替わりそうになった時がありました。
 私が見ていても主審の判断の方が正しいと感じたのですが、べつに副審がエコひいきで判定している風でもなく、単に経験不足からの判断かな、という程度のものでした。けれど、その代表の方はすぐに試合を止め、最高審判長判断として再試合を行なわせました。
「選手は一生懸命やっていますからね。」
 彼がその時に言ったセリフです。

 選手を待機させるのにも気を使っていて、試合前に負担が無いようにされていました。
「自分が選手としてやってきた時の経験から、こうした方がいいと思う形でやっています。」
ということで、
 「僕が出てた時なんか審判に怒られてましたからね。」
とは彼の述懐ですが、私にも経験があります。

 昔の閉鎖的な大会だった頃は、選手は自分のところの道場生ばかりで、審判をしているのは指導者クラスの人がやっているので、選手に対して横柄なものの言い方をする人がけっこういました。

 最近では空手界もかなりオープンになっていて交流が進んでいますから、そんなエラそうな審判はあまりいませんが、規模が大きくなり過ぎて進行ばかりを気にしているような運営の大会もあります。
 どちらも選手本位の大会とは言えません。

 自分が選手時代に経験したことを主催大会でフィードバックして運営している点は本当にすばらしいと思います。
 けっこう強い選手が多くてレベルが高いので、あまり強くない選手は出しづらい大会なんですが、トップがキチンと大会進行を見ていてくれるので安心して試合に出すことができます。

 また、彼のところで以前に別の道場で見た選手がいたので、「どうして移籍してきたの?」と聞いたんですが、
 「もう大人なんだし、あんまり細かいことは聞かないんですよ。」
と言っていました。
 しがらみが多いこの世界で、アッサリとそういうことを受け入れられるというのも器の大きさでしょう。
 「子供にはまた違って、怒らなければならない時もありますが・・・」とも言っていました。

 大人と子供で対応が違うのは当然といえば当然なんですが、その区切りを見極めて対応するのはけっこう難しいものです。

 そういった部分も勉強させてもらいながら、彼みたいな指導者が増えればこの先の空手界も良くなっていくのになぁ、と思った出来事でした。


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