これだけは


空手として


最低限必要な事

 先日、TVを観ていたらたまたま夕方のニュースで空手選手の特集をやっているのを目にしました。
 伝統派に所属する女子の型の選手が、同じ道場に所属する選手同士で日本一を競うということから、注目を浴びてニュース番組に取り上げられたものです。

 対決の結果は後輩に当たる大学生の選手が、外国の大会で優勝して帰国したばかりの先輩を決勝で下して優勝しました。

 2人の練習風景だけでなく、職場や学校生活なども取り上げながら空手に励む2人を映し出し、普段のあどけない女の子の表情が試合における演武の際にはキリリと引き締まるというそのギャップに、番組のアンカー初めコメンテーターの人達も称賛を送っていました。

 一般のニュースで空手が取り上げられるという事はほとんどないため、競技の普及には大きな役割を果たすものであったと思います。

 放送では決勝でやっている型をすべて流していたわけではないのですが、2人の演じた型はメリハリがあって、技のスピード、キレもよく、動きの緩急も表現された素晴らしい型であったと思います。

 けれど・・・です。

 2人の突きを極めたポーズがそれぞれアップで映し出されていましたが、非常に残念なところがありました。

 空手の型を競技として行なっているという性格上、見栄えを良くするために多少のオーバーアクションがあったり、少しくらい意味不明な技の動きをしていたとしても、それは目をつぶらなければならないのかもしれません。

 しかしながら、仮にも空手として演武を行い、突きをするのならば、拳くらいはキチンと握っておくべきではないでしょうか。

 映像に映った正拳の握りは親指が緩んで隙間が見えていただけでなく、拳頭と呼ばれる当てる部分の人差し指と中指がズレていました。

 全日本大会のトップを争う2人がこのような正拳の握りをしているということについて、私には釈然としない思いがあります。
 あの握りで実際にモノを叩けば手の骨が折れてしまう危険すらあります。

 「その場でやる突きや蹴りだけが基本じゃないよ、物に当てるまでが基本だよ!」

 これは私の師範が言っていた言葉です。

 ここに基本と組手をつなぐ鍵があると私は思っているのですが、それはさておき、この考え方からすると、全日本の型の優勝者「基本ができていない」という事になります。

 昔はたとえ伝統派と呼ばれる流派の道場で、組手は寸止めをしていると言っても、それこそ実際に当てれば大ケガに繋がるかもしれない威力の突き蹴りを持っていたからこその寸止めであり、普段の稽古でも巻き藁を突き、拳立てをするのが当然のように稽古の中に入っていたものです。しかし、あの拳の握りを見る限り、ろくに拳立てさえできないのではないでしょうか。

 武道ではなくスポーツとしてやっていると割り切れば、別に問題にならないことかもしれませんが、同じ「空手」を名乗るのであれば、最低限の突き、蹴りは当てる事ができるようにはなっていて欲しいものです。

 そう思う空手関係者は私だけなのでしょうか。


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