モチベーションの維持


続けるための動機


そのための自主トレ方法
 空手を「始める動機」にはいろいろあると思いますが、何より多いきっかけは「強くなる事」ではないでしょうか。
 特に空手を始める時の動機としては外面的、つまり肉体的に強くなる事にあり、相手を倒す強さを身に付ける事が「カッコイイ」と思えるものです。ところがそれをきっかけに空手を始めても、そんなに簡単に強くなれるものではなく、すぐに諦めて辞めてしまう者も大勢います。
 ですから、次の段階として「続けるための動機」が必要になってきます。それが大会であり、昇級審査で上の級を目指すことにあるのです。

 試合にも出ず、昇級審査も受けたくないという人がたまにいますが、そんな人が長続きする事はまずありません。「空手を学ぶことで人格形成を諮るのが目的だから試合には出ません」という人もいます。大きな目標に向かう気持ちは重要ですが、そこに向かって小さいステップを踏もうとしないのは上達の大きな妨げです。

 そういった小さいステップを踏んでいても次の段階に進むのに足踏みしてしまうことが多々あります。
 その大きな理由の一つが仕事などで「忙しくて稽古に行けない」というものではないでしょうか。

 学生の間は学業やアルバイトに忙しくしているとは言っても、他の予定を調節する事で稽古する時間を作り出す事はそれほど難しくありません。
 しかし、社会人になると自分だけのペースで仕事するわけにもいかず、稽古の時間になっても仕事が終わらなくて、休まざるを得ない事もけっこうあります。

 そんな状態の時にどうするのかで、その人の空手に取り組む姿勢が見えてきます。

 一番多いのは「忙しい = 仕方ない」という理由があることに自ら納得して稽古をしなくなることです。
 しかし、道場での稽古に参加できなくても自主トレでできることはいくらでもあります。短いコマ切れの時間であってもそれをやろうとするか、忙しいことを逃げ口上にしてやらないかでその先が大きく変わってきます。たとえわずかな時間でも自主トレを続けることで確実に進歩していくものだからです。

 私が道場生に薦めている自主トレは「拳立て」です。拳立てを一日に一度50回する。それだけです。まだ慣れていない人にはちょっとキツくて連続ではできないかもしれませんが、分けてやっても構いません。慣れれば1分でできます

 どれほど仕事に追われている人でも、一日の中で1分の時間が取れないほど忙しい毎日を送っている人なんて、私は今までに1人として知りませんけどね。
この一日にたった1分頑張る事を続けられるかどうかが、その人の成長に関わってくるのです。

 そうは言っても、特に社会人になると学生の頃より空手を続ける難しさはずっと複雑になってきます。
 まずは、仕事との両立です。仕事の都合で決まった曜日、時間に来れないことが多く出てきます。
 さらに結婚して子供もいると家庭との兼ね合いも重要な問題になってきます。パートナーや子供に対しての家族サービスも重要です。家族の理解がなければ仕事の後や休みの日に家のことを置いといて空手へ出かけていくのは難しいと言えるでしょう。
 稽古の後に家に帰ってから食事や入浴、明日の準備などをしなければいけません。自分ひとりのことならば自分で調整すれば済む話ですが、家族の都合を考えると中々ワガママが言えなかったりもします。
 休みの日も自分が試合に出るならまだしも、大会の応援や手伝いで出て行って朝から丸一日がつぶれてしまうのもよくあることです。

 空手の稽古ができるのも家庭の協力があってこそのものです。

 それに、空手は格闘技ですから稽古や試合でケガをしてしまうこともあります。それが仕事に差し支えるケガだと仕事との両立はとても厳しいものになってくるでしょう。そこまででなくても、治療のために通院する時間が取れない人は多くいます。

 そして、何より重要なのはモチベーションの維持です。空手を始めた時はヤル気満々で、やることすべてが目新しく意欲に溢れていますから、稽古に行くのが楽しくてしかたがないものですが、しばらくすると習うのはそんなに新しいことばかりではなく、できないことをできるようにするために、いわば同じことの繰り返しが稽古の中心になってきますから飽きが出てきます。そうなってくると遅い時間に仕事が終わってから稽古に出られるように頑張れるのかということが空手を続ける重要なポイントになってきます。道場の場所、稽古時間が自分の都合に合わなくなってくると、他の用事を無理に調整しようという意欲が薄れてきて、「この予定が入っているから仕方ない」と思うようになってくるのです。

 そんな中でも、たまに「稽古に行かねば!」と、忙しい合間を縫って一念発起して久し振りに道場へ顔を見せても、型も忘れ、組手もご無沙汰となれば、当然、以前よりヘタに(= 弱く)なっていますから、まずは自分が到達した級のレベルへ戻すまでに時間が掛かります。更にその一歩上まで進もうとするなら、更に努力が必要となってきます。
 空手を続ける意欲を引き出すために試合に出ても、継続していなければ中々勝つこともできず気持ちが萎えてくるものです。
 そうなると仕事の忙しいのは変わらないですから、また、言い訳へ逃げて道場から足が遠のいてしまうことになるのです。

 そうならないために、自分が何を目的に空手をしているのか、空手を続けることで得られるものが何なのかを自分の中で明確にし、稽古を続ける意欲を持ち続けて欲しいと思います。


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