息吹について


呼吸法


ダイエットとの関連

 ロングブレスダイエットというのが流行っています。
 俳優の三木良介氏が考案したもので、電車の吊り広告や雑誌の宣伝ページなどで三木氏が頬を膨らませて手のひらを突きだしている写真を見たことのある人もいるでしょう。

 三木氏は自分が腰を痛めた経験があり、どんな医者や整体などに通っても治らなかったものが、丹田を意識した呼吸法を続ける事によって痛みが改善されたそうです。そこから様々な古来の呼吸法を勉強して編み出したのが「ロングブレスダイエット」となったのです。
 三木氏はダイエットだけでなく、本来は健康法として普及したいとTV番組で述べていました。しかし、深い呼吸を吐き切ることによって体の不調だけでなく、代謝が上がり体脂肪も落ちていく効果が高いことから、本を出版する時に編集者が一般受けを狙って「ロングブレスダイエット」という名称を用いたそうです。

 「ロングブレスダイエット」などと聞くと、何か新しいモノのように聞こえますが、要は丹田呼吸法です。
 中身にはもちろん三木氏の工夫が生かされてはいますが、基本的な部分は中国四千年の歴史の中で育まれてきた養生法の柱となるものです。

 丹田呼吸法は現代でも本場中国で功夫や気功において用いられているだけでなく、中国武術から伝わった日本の空手においても重要な鍛錬として行なわれています。

 空手においては「息吹」という名称で呼ばれており、丹田呼吸を基礎の鍛錬として初心者のうちから取り入れている流派も多くあります。

 鳳雛会ではアドバンスクラスの緑帯になった段階で指導しています。その理由は、子供や初心者にとって丹田呼吸は簡単ではない事と、まずは空手の初歩的な身体技術を身に付けることを優先したいからです。

 とはいえ、丹田呼吸には素晴らしい効果があります。けれど一般的なイメージとして、空手の息吹は試割を行う前にやってるおまじないみたいなものだと思っている人もいるのではないでしょうか。
 あれは意識を集中させるためだとは思うのですが、単にカッコ付けの為にやっている人もいますね。なぜならそれがどうして必要なのかも説明できない上に、やってる息吹は「声」で出してたりしますから。

 そういう形だけの息吹はさておき、空手における息吹の効用としては、まずは意識の集中にあります。上に述べた試割り前の息吹などがそれです。
 次に呼吸の調整。激しく動いて息が上がったりした時に「逃れ」の息吹を行なったりします。いわゆる深呼吸に近いものですね。
 そして体の各部の「締め」を意識するということが重要です。これは早い動きの中では中々体得しにくいので、ゆっくりと息吹をしながら筋肉を収縮させ、力がどのように入っているのかを指導者がパンパンと叩いて確認したりします。空手の鍛錬としてよく用いられるものです。
 以上の三点が空手での息吹の主な用法となります。

 雑誌の特集で丹田呼吸についてわかりやすくやり方を説明している記事を見つけたので紹介しておきます。医学博士の帯津良一 氏の書かれたもので、呼吸と自律神経が関わりのあることを西洋医学の考え方と東洋医学的見地から述べられており、次のようにとてもわかりやすく書いてあります。

 呼吸は「心の鏡」であり、不安で緊張している時には呼吸が浅く、早くなったりするのを、丹田呼吸により、心のスイッチを切り替える。つまり、自分の意志でコントロールできない自律神経に意識的に働きかけ、気持ちを落ち着かせることができるようになるのです。

 空手においても相手と戦うという、いわば極限の興奮状態にありながら、冷静に気持ちを落ち着かせて戦うことができる「肚の座った」人間になれるということです。

 ステップ3のエネルギーを体内に取り入れるレベルまで行えるようになれば最高なんですが、なかなかそこまでできるようになるのは難しいかもしれません。
 けれど、呼吸法を行うことで体に負担を掛けることはまずないので、取り組んでみるのも良いと思います。

 空手の稽古においても呼吸の使い方は非常に重要で、息吹を行うことで上に述べたような効果が得られますから、稽古の最中にも意識してしっかりとした呼吸を行えるようにしたいものです。

 また、空手の息吹は丹田呼吸で行うので、ロングブレスダイエット同様にダイエットにも効果があります。しかし、空手の稽古をしているのなら呼吸を使ってカロリーを消費するより、その時間実際に身体を動かした方がエネルギーの消費は遥かに大きくなります。 (当たり前ですが)

 只、呼吸は一日中ずっと行なっているものですから、それを意識した呼吸法に替えるということは、総合でかなり長い時間をダイエットに費やせるということです。だから結果的にとても効果が高くなるのです。

 丹田呼吸がダイエットに有効な理由は、次のようなところにあります。

 ・深く息を吸い込むことで新鮮な酸素を多く体内に取り入れ代謝を上げる。
 ・横隔膜を使って強く息を吐き出すことで腹筋を使う。
 ・それに体の動きを合わせることで各部の筋肉を意識的に収縮させて、更にエネルギーの代謝を上げることができるわけです。
 身体を激しく動かさないので、膝に負担が掛かったり、キツくて続けられないということがないため、誰にでも無理なくできるというわけです。

 空手の稽古だと普通の人では一回に2時間もやれば長い方で、それも週一の人がほとんどです。呼吸法だとちょっと手が空いた時に自分がやりたいと思ったらすぐに行えるのが良い点です。準備運動もいりませんし、着替える必要もありません。
 ダイエットに一番有効なのはこの点でしょう。1日に何回も行えるということでカロリーの消費が増えます。それに筋肉は使っている時はもちろんカロリーを消費しますが、実は運動後もしばらくの間はエネルギーの代謝が高まるのです。ですから日に何度も呼吸法によって腹筋などを使えばダイエットには非常に効果的なのです。

 空手の稽古と並行して普段の生活の中に息吹を取り入れていけば、ダイエットに効果があるというだけでなく、毎日の生活すべてが修行という武道の精神に則ったものにもなるわけです。

 是非、息吹を毎日行なってください。きっと素晴らしい効果が得られるものと思います。


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