空手本来の技術を
素手の技術と防具の使用
安全性と競技の狭間で
素手の空手とグローブを着けるボクシングとではパンチの叩き方が違うというのはよく言われることですが、空手の中にあっても素手・素足で戦う試合と、手足にサポーターを着けて行う試合とでは技術が変わってきます。
少年部に限らず、一般でも中級レベルまでの間は、まずはとにかく技を出すことを優先させているのですが、上級クラスで素手・素足になると、どこを狙ってどう攻めるのかが重要な技術になってきます。
そこに普段の鍛錬で拳足を鍛えているかどうかがわかるのです。
上級者になってくると、ただ単に技を出しているだけでなく、ダメージを的確に与えるポイントを狙う必要が出てきます。
急所を狙うということです。
手による上段攻撃なしのフルコンタクト空手ルールの場合、狙える中段の急所は、水月(みぞおち)、稲妻(わき腹・いわゆるレバー)、秘中(鎖骨と鎖骨のつなぎ目)などに限られてきます。そこに当たればダメージが大きいだけに、受ける方も本能的にガードします。
そこで、上級者になると他の部位でもダメージを与えるピンポイントを攻めるようになります。具体的には、肉の薄い鎖骨を狙ったり、肩の付け根の筋肉のつなぎ目を狙ったりするなどです。
このあたりまではサポーターを着けていても動きとしては同じですが、更にレベルが上がると、肋骨の隙間を一本拳で突いたり、相手の叩いてくる拳を逆に狙って叩くなどの細かい技が出てきます。
背足やスネで闇雲に蹴っていた下段回し蹴りも、中足や足先(爪先)での蹴りを使うレベルになってきます。
狭いポイントを小さい部位で攻撃しようとすると当てるのが難しくなってきますし、当然ですが、小さい部位を攻撃部位として武器化するのには鍛錬が必要になります。
そして、それが使えるようになると空手として一段上のレベルに上がったと言ってよいと思うのですが、中々そういう技を使う選手は出てきません。
試合では一番多く稽古している技が、一番自然に技として出るわけですから、子供の時から大会用の稽古ばかりしている人は細かい技が習得しにくくなっていると言えます。
私の師範は、中足で上段が蹴れるようにならないとダメだとよく言われていました。私も基本稽古の時は意識して稽古しているのですが、組手で自在に使うのには中々難しいものがあります。
けれど、初級・中級の間は仕方ないとしても、上級者になってくれば大会用だけでなく、本来の空手にある技術も学ぶ稽古をして欲しいものです。
ピンポイントを狙える技を身に付けると、試合の中においてもレベルが上がります。
私の道場でも上級者には中足での蹴りを指導していますが、基本的な部位鍛錬ができていないと怪我が怖くて中々使えないようです。
けれど、やっと下段へ中足の蹴りを使うようになった試合では一段上のレベルの試合内容を見せてくれた者もいました。
要は、使えるだけの鍛錬ができているかどうかです。
中足での蹴りはサポーターの有無と関係なくダメージを与えることができますが、手にパンチンググラブを着けていたりすると細かい手技はできませんし、足もサポーターを着けることで与えるダメージは大きく減少されます。
ですから、それによって細かい空手の技を学ぶ機会が減っていくのです。
安全性の為にはサポーター類の使用は絶対に必要だと思いますが、空手の技術を高める為には、細かい技をおろそかにしない意識を持つことも大事だと思います。