大会の入場料


その試合 お金を出して観たいですか?

 大会を運営するには費用が掛かります。
 会場費、トロフィーや参加賞、パンフレットなどの物品代を初めとして、審判や役員への謝礼金を含めた人件費など、部外者からは見えにくいところにも多大の費用が必要となってきます。
 その費用をどのように工面するのかという点で主催者は頭を絞るのですが、その方法には大きく分けて次の3つのやり方があります。

●大会参加者からの出場費で賄う方法。
●試合を見に来る観客から入場費を徴収する方法。
●スポンサーを付けて広告を出し、その広告料(寄付)によって運営する方法

 大会の規模や種類によってその負担する範囲が変わってきますが、多くの大会ではどれか一つだけではなく、いくつかの方法を併用して資金を集めています。

 大会の運営として一番大きく変わってくるのは、入場料を徴収するかどうかにあります。場所を貸し出す体育館側でもこの違いを重視していて、入場料を取るイベントと無料で開放しているイベントでは貸し出し料金を大きく変えて設定しているところがほとんどです。
 つまり、公益事業としてやっているのか、収益事業として行っているのかという違いを厳しく区別しているということです。

 私は「武道」の大会では入場料を徴収するべきではないと考えています。
 なぜなら大会は修行の一部であり、お金を払って見に来る客に見せるための
「見世物」ではないからです。
 もちろん、上に述べたように大会を開くには多くの費用が掛かりますから、それを見に来る人達に負担の一部をお願いすることはあってもいいとは思います。しかし、その額が他のプロスポーツの入場料やコンサートなどと同じくらいの値段を取り、多大の収益を挙げるとすれば、それは「興行」になります。

 「興行」ということは、プロがその技を見せることによって対価を得る場になっているということです。

 また、入場料を取らない大会でも、ほとんどの大会ではパンフレットに広告を載せることで運営費用を集めています。ところがその広告集めを道場生に強要したりするところがあったりします。会社の営業宜しく、広告を集めるためにペコペコと頭を下げて回ることを強いるのは、自分の足で立つ事を教えるべき武道においてあるまじき行為だと言えるでしょう。
 もちろん、好意で大会運営に協力してくれる企業があれば、それをありがたく受けるのに問題は無いと思います。しかし、自分の方からお金を目当てに走り回るようなことは慎むべきでしょう。自分たちで賄えないほどの費用が掛かるのであれば、規模を縮小するとか、見栄だけに支出するような部分を削って、現在の自分たちに見合った大会を開くべきです。

 全日本クラスの大会になればそれなりの会場や審判を用意する必要もありますし、試合の内容自体も観戦に値するレベルになりますから、一般の人もお金を払って見に行く価値があるでしょう。そんな大会なら他の修行者にとっても勉強として見る価値があるので入場料を徴収されても仕方ないかもしれません。

 ところが最近では少年部の大会にまで入場料を徴収する大会が現れてきました。少年部の大会というものは普段の稽古の成果を試すためのものであり、その趣旨にも青少年の健全育成を目的として謳っている場合がほとんどです。それにもかかわらず、その試合を見る人からお金を取ろうとする主催者の見識を疑います。
 少年部の試合を見に来るのはほとんどがその家族や友達であり、空手の試合そのものを観戦するためにお金を払う人はまずいません。また、それほどレベルの高い試合が行なわれているわけでもありません。本人にとっては普段の道場で稽古した内容を、試合という場でどこまで発揮できるかを試す場であり、家族や友達からすればその成長を確認する場であるはずです。試合に出ている子供の親、兄弟、おじいちゃんやおばあちゃん、場合によっては親戚までが見に来ることになると思いますが、そんな身内からお金を取って道場の先生は気が引けないのでしょうか。その上、大体においてはその試合に出場するのにも参加費が必要で、それも結構な額を徴収されています。
 もし、入場料を取るほどの大会ならば、出場費は保険代程度に留めるべきだし、出場者は予選大会を勝ち抜いて出場権を得た選手に限るべきでしょう。そういった大会ならば、身内であっても、試合を見るのに観戦料を徴収されても納得できると思います。
ところがそんな運営をしている大会はほとんどありません。
 これには空手界を統一する組織が無いということも関係していますが、それよりも大会自体が「お金儲け」になっている実態が問題であると思います。更に言えば大会を開くことによって名誉欲を満たしているところも多くあります。自分のところはこれだけ盛大な大会を開いているとして多くの来賓を呼び、開会式では名前だけの大会会長をしている政治家が、長々と自分の政治活動についての話をしたり、形式上はチャリティーとしてわずかな額を寄付することによって善人ぶっている偽善的な大会のなんと多いことか。

 チャリティー自体が悪いといっているのではありません。しかし、大会でこれ見よがしに寄付をするよりも普段の活動でもっと出来ることがあるはずです。(だいたい寄付している金額を発表しているところも少ないです)
 本当にチャリティーをする気があるならば、運営費用は大会参加者の出場料やパンフレットの広告収入で賄った上で、徴収した入場料を全額寄付したらどうでしょうか。
 そんなことをするところは絶対にありませんけどね。

 また、大人の大会も同時に開催しているのだから入場料を取っても構わないだろうという感覚を持っているところもありますが、子供の親にとっては一般部の試合があろうとなかろうと関係のないことです。大人の試合で費用が掛かるからといって、子供の試合を一緒に組んでお金を集めようなどというのはとても浅ましいことだと思います。

 大会を運営するのに費用が掛かるのは事実です。しかし、少年部や新人戦レベルの大会で入場料を徴収するべきではありません。もし経費がオーバーするのであれば、その分を削って規模を縮小して大会を開くべきです。
みなさんはそう思いませんか?


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