目的を見失わない事


試合についての考え方2


何のための大会?


 9月になり秋の大会シーズンに入ってきました。これから多くの大会が開催される時期となります。当会へも大会の出場案内が多数届いており、試合に向けて激しい稽古を積んでいる人も多いと思います。

 大会は、一つの晴れ舞台として普段の稽古の成果を示すのには非常に有用だと思います。それは自分の実力を試すのに最適なものではありますが、何のために試合に出るのかという事を考えたことはあるでしょうか。

 空手は本来自分の為にやるもので、大会の為の空手ではありません。けれども、大会だけが空手ではありませんが、負けた悔しさをバネにして次に向けて頑張る気持ちを持つことは、充分に、空手をやる目的となり得ます。

 大会の為だけに空手の稽古をするわけではありませんが、大会を一つの目標とすることで、同じ稽古のくり返しで停滞しがちな意欲を揮い立たせることができるからです。 特に少年部には大会という目に見える目標があった方がいいでしょう。 なぜなら子供にとっては「自分を高める」などという抽象的な目的では頑張ろうという意欲は中々出てこないからです。

 私の師範はよくこう言っていました。
「大会の為の空手を教えに来たんじゃないよ!」
 はるばるアメリカから日本へ指導に来られているのに、我々が試合に使える技ばかりを稽古していると、よくこの言葉で怒られたものです。

 自分は一体、何のために試合に出るのか、何の目的で空手をしているのかをよく考えないといけません。
 そして、これは指導している人の方針によって変わってくるものです。

 大会で勝つのを第一に考えている指導者は、試合結果が全てだと思っています。 スポーツとして考えるならばそれでかまわないかもしれませんが、武道修行の一貫と考えるなれば、試合での勝ち負けは全く関係ありません

 しかし、指導者が勝つ事を第一として指導していれば、習っている道場生が同じ考え方を持ってしまうのも、ある意味当然でしょう。

 武道本来の目的に至る過程として、試合に出るのは非常に有効な稽古の一つであると思います。しかし、試合することによる弊害の方が大きいと考え、試合自体を行わない武道も存在します。

 けれど、試合をすることで多くの相手と切磋琢磨すれば、当人たちのレベルが高まるだけでなく、その種目自体の技術レベルが高まっていくことにもなるのですから、多くの交流を生む大会には積極的に参加するべきだと私は思っています。

 本物の空手を目指していく上で、たとえルールの制約があったとしても、実際に相手と全力で戦うといった経験を持つことは非常に重要です。

 ですから鳳雛会では道場生に各種大会への参加を積極的に勧めています。 別に、空手の稽古をする事 = 大会へ出ること(試合をすること) ではありませんから、出たくないというのに無理に出させることはありませんが、出たくない理由に問題がある場合もあります。

 別の項でも述べていますが、多いのは
「まだ勝てないので勝てるようになったら出ます。」
というもの。

 勝てるのがわかっているなら試合に出る必要はありません

 まだ自分が弱いと思っていても、まずは試合に出てみてその弱さを身をもって知ることです。そうすれば、その後の稽古に真剣さが出てくるのです。

 これと同様に多いのが、
「この試合は勝てるから出るけど、この試合は勝てないので出ません。」
というもの。
 確かにホームタウンデシジョンがひどくて試合をするのがバカらしくなるような大会も残念ながらあります。けれど、試合のルールが自分の苦手とするものだという場合に、勝てない試合には出ないというのは自分の弱い部分から目をそらしているにすぎません。

 だいたい試合に出るのは自分の弱い部分を確かめるために出るのです。
 「勝つ」ことが目的なのではなく、弱い部分を見つけてそれを直していくのが目的なのです。これがスポーツと武道の違いです。
 それに試合に勝つことばかりを優先していしまうとマナーすれすれどころか、ルール違反まで犯してまで試合に勝とうとする者が出てきます。

 多いのは親が申告体重をゴマかして軽いクラスで出場させるもの。 少年部の試合では体重判定にでもならない限り、主催者が体重を測ることはありませんが、試合が始まって対戦相手と並んでみてみると明らかに体格が異なっている場合があります。
 「おいおい、ホントに軽量級か?
というような子が混じったりしていると対戦相手の子が可哀そうになります。
 大会への申し込みから試合当日まで2〜3ヶ月ありますから、成長期にある子供はその間に身体が大きくなってしまう事もあるかもしれません。
 けれど、さすがにそこまでは・・・というほど体格差があると申し込み時の記載に虚偽があったのでは、と疑われてもしかたないでしょう。

 次に多いのはキャリアを誤魔化して出る選手。他の大会で入賞実績があるにも関わらず、初心者クラスにエントリーしてくる者。子供の場合はまずは申込書を書く親の問題ですが、その選手の指導者が確認すべきものです。かなり以前の大会結果などは忘れていたりすることもありますからチェック漏れもあり得ますが、出場時に帯を変えて出ている場合などはその指導者がグルで不正しているのは明らかです。
 そんなことをして試合に勝ったとしてもいったいどんな自信を付けるというのでしょうか。そのクラスにエントリーしている他の選手の入賞するチャンスを奪い大会自体の存在意義をなくさせるものだけでなく、勝った本人にとっても全く効果が無い上に、不正をして勝者の称号を得たという、心に大きな負担を残していることになります。

 何のために試合に出るのか、稽古している本人は自分の胸に、子供を試合に送り出す親は子供の将来のために、そして指導者は自分が道場生に何を教えたいのかを、今一度よく考えて欲しいものです。


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